その1cmをけずりだせ

東洋大の駅伝チームのスローガン。

「その1秒をけずりだせ」

気持ちは分かるのですが、個人的にはどうもしっくりきません…。


精神論振りかざしてもどうにもならないと思うんですよね。
メンタルが原因でタイムを失うことはあっても、
メンタルのおかげでタイムを稼げることはない。

…だって、みんな一生懸命やってるよね…

大人になって走っているのは、
精神論に対するアンチテーゼでもあったりするので、
その1秒をけずりだすため、のテクニカルな話をしましょう。


後半に失速した昨年6月の葛西臨海公園ナイトハーフのデータ。

葛西臨海公園ナイトハーフ ピッチ、ストライドデータ

失速してもピッチは落ちておらず、
ストライドの方がペースとの相関関係が大きいことがわかる。
総合データはこんな感じ。
(心拍数は正しく取れてない、これは以下の総合データ全てについても同様)。

葛西臨海公園ナイトハーフ 総合データ

続いて、同じハーフマラソンでも、
後半にペースを上げて好結果が出た、
10月末の手賀沼エコマラソンのデータ。

手賀沼エコマラソン ピッチ、ストライドデータ

こちらの方がもっとわかりやすい。
ピッチはどんなペースでもほぼ一定。
ストライドとペースのグラフがほぼ一致する。

手賀沼エコマラソン 総合データ

総合データはこんな感じ。
葛西臨海公園ナイトハーフと比較して、
5分半以上タイムが伸びているにもかかわらず、
ピッチは落ちている。

タイムが伸びた要因はストライドが10cm伸びたからだ。

10kmのデータも見てみよう。
ほぼ平坦でコース距離が正確だった3レースをチョイス。

上から

  • 5/3 柏の葉爽快マラソン
  • 11/19 越谷レイクタウンランニング
  • 12/24 赤羽月例マラソン

10kmレースデータの比較

ピッチは全く同じ。
タイムを縮めている要因はストライドが伸びていることだとわかるだろう。

10km、ハーフと違う距離で比べても、ピッチはほぼ変わらず。
違いはストライドだけ。

普段のんびり走っているトレーニングでも
160~170spm程度のピッチなので、
スピードが変わってもピッチはあまり変わらない。

現役時代、トラックレースで周回遅れになった時に、
「前の選手に足の回転合わせて行け!」
と言われていたけど、全く役に立たないアドバイスだ。
ペース落ちててもピッチは落ちていないんだから…。


単純に考えて、走るスピードはピッチ×ストライドで決まるので、
ストライドを伸ばすことが早く走る近道だ。

では、どうストライドを伸ばす?というと、
以前書いた肩甲骨と骨盤の連動などとなる。

肩甲骨の可動域が狭い人や、
上半身が上手く使えていない人は、
かなり伸びしろがあると思っていい。

なので、速く走ろうと思った場合、
一度専門のトレーナーに診てもらう、
というのが一番かもしれない。

正しいフォームを教えられても、
それができる体を作れていないと、
悪いままで走り続けることになって効果がない。

可動域が狭いところを広げるトレーニングと、
体のバランスが悪いところを整えるトレーニングを教えてもらって、
正しいフォームで走れる体作りも一緒にやらないと、
悪いフォームの反復練習になるだけだ。


…あと、これは賛否両論あると思うのだけど、
走り始めの頃、あまり体が出来ていない状態では、
長い距離を走るのはおススメしない。

ある程度体が出来上がるまでは、
小さいフォームで走った方が体が楽なので、
長い距離を走ろうとすると、どんどん動きが小さくなる。

なので、最初は5kmとか距離は短めでも、
大きなフォームできちんと走ることを心がけた方が、
上達は早いと思っていたりする。


…ということで、精神論で1秒をけずりだすより、
正しいフォームを作るトレーニングをして、
ストライドの1cmををけずりだす方がわかりやすい。

170spmのピッチで走ってるとして、
1cmストライド伸ばせたら、1分間で170cm進む。
箱根駅伝のような20kmの距離だと、34m進むことになり、
トップランナーの場合6秒タイムが縮むことになる。

というわけで、今年の僕のスローガンは

「その1cmをけずりだせ」

ということで、ランニングフォームを修正していこうと思います。